特色ある街作り、文化への貢献

賑やかだった王子商店街

王子駅前を通り飛鳥山を登る都電線は、かつては今の王子銀座商店街を抜け赤羽に向かって軌道が延びていました。王子銀座商店街は現在約80店舗が店を構えていますが、昭和初期にはその3倍の店があったとも伝えられています。
道路の拡幅や地下鉄の開通など、王子の街は様々に形を変えています。街の整備で住人の方は増えましたが、八百屋さん、魚屋さんなど物を売る店は少なくなり、店員さんと話す商店街特有の楽しみも減ってきました。

王子の街に劇場ができるまでの物語

佐藤電機は平成10年、王子一丁目にビルを建てました。1階、2階は店舗。3階から上は住居。地下には駐車場のための空間を確保しましたが、必要な数の駐車場を作っても、大きな空間が余ることが分かったのです。
何にしよう、倉庫にでもしようかと思案していたところ、家族から「劇場がいいよ」の声がありました。唐突な提案に戸惑いつつ、とにかく調べてみようと他の劇場を見て回ったのです。小劇場の作り方というのは、その成り立ち上、元から劇場用に作られたというものは少なく、違う用途で建てられた建物からの転換が多い状況でした。そのため、照明が低いなどの不便さがあったのです。

なるほど、駐車場で確保した高さは、おおよそ2階分の高さ。これであれば、照明器具やその他の設備を付けて十分使い勝手のいい劇場も作れる。電気設備に関してはお手の物。

7月、倉庫になるかもしれなかった地下空間は、客席100を備えた劇場になり、北区つかこうへい劇団による柿落としに、「明日の演劇を少しよくするために、未来の演劇を豊かにするために」運営をスタートしました。

地域に貢献する劇場を目指して

劇場は若手劇団の利用が多く、トライアル制度や割引制度、若手演出家向けのワークショップの開催などで演劇人の成長をサポートする一方、審査制度を設けて上演可否を判断するなど演劇のクオリティには妥協がありません。
こうした取り組みの結果、今では、年間スケジュールに空きがないほどの支持を受けています。

2004年からは「佐藤佐吉演劇祭」を隔年で開催しています。劇場が薦める団体を一挙に上演します。2014年からは、劇場を飛び出し、北とぴあ(北区の施設)を含む地域の複数施設での上演、劇場周辺のお店を巻き込んだパンフレット作りを行い、地域全体を盛り上げていく試みを始めています。

このほかにも、「王子落語会」を毎夏、地元商工会等と共催したり、北区のコミュニティラジオ「きたくなるまち」での情報発信を行ったりしています。

「たたかう劇場賞」受賞

2008年には、こうした活動について「地域の文化拠点として、創意工夫に満ちた運営をしている」「民間の劇場としての自由度があり、実験的な若手劇団を次々と輩出している」点を評価され、公益社団法人企業メセナ協議会によるメセナアワード「たたかう劇場賞」受賞しました(同年のこの賞では、サントリー、トヨタ自動車などが受賞しています)。

王子の街から新しい風を

街も変わり人の生活も変わっていきますが、往事の賑わいを懐かしむだけであってはいけません。
佐藤電機は、王子にしかないものを作り、王子の街から新しい風を起こしていきます。